賃貸でプロパンガスを
都市ガスに変えられる?
入居者だけでは決められない理由と現実的な対応策
公開日:2026年8月15日 / 更新日:2026年8月15日
この記事の結論
- Q. 賃貸のプロパンガスを都市ガスに変えられる?
-
A. 入居者だけでは変えられません。
ガス設備の入れ替えは建物そのものに手を入れる工事にあたるため、決めるのは大家や管理会社になります。
国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」でも、借主が貸主の書面による承諾なしに物件を改造することは想定されていません。 - Q. 大家がOKすれば必ず変えられる?
-
A. 承諾のほかに、あと2つの条件がそろう必要があります。
①前面道路に都市ガスの導管が来ていること、②給湯器・コンロの部品交換とガス配管の入れ替えができること、の2点です。
どれか1つでも欠けると、承諾があっても工事が進まない場合があります。 - Q. 変えられない場合、入居者にできることは?
-
A. プロパンのまま料金を下げる方向に切り替えるのが現実的です。
2025年4月2日施行の省令改正で、LPガス料金は基本料金・従量料金・設備料金の3つに分けて通知することが義務づけられました。
この通知は既存の契約にも適用されるため、内訳を見て相場と照らし合わせるところから始められます。
毎月のガス代を見て、「都市ガスの物件だったら、こんなに払わずに済んだのかな」と感じたことはありませんか。
検索すると「都市ガスに変更する方法」といった記事は出てくるのに、読み進めるほど自分の話ではない気がしてくる。
それもそのはずで、そうした情報の多くは持ち家の人に向けて書かれています。
この記事では、賃貸に住んでいる人の立場から、どこまでが自分で決められてどこからが決められないのかを先に整理します。
そのうえで、変更が難しかった場合に残る道を最後にまとめました。
できないことをはっきりさせておくと、悩む時間そのものが減ります。
まわり道せずに、いまの物件でできることへ進んでいきましょう。
📊 賃貸で「できること」「できないこと」を一目でチェック
| やりたいこと | 入居者の一存で | メモ |
|---|---|---|
| プロパンから都市ガスへの変更 | できない × | 建物側の工事。決めるのは大家 |
| ガス会社そのものの切り替え | できない × | 設備を持つのはガス会社と大家 |
| 料金の内訳を確認する | できる ○ | 2025年4月から3区分での通知が義務 |
| 相場を調べて交渉材料にする | できる ○ | 一括見積もりサービスで無料確認 |
| 次の引越しで都市ガス物件を選ぶ | できる ○ | 長い目で見ると最も確実 |
出典:国土交通省「賃貸住宅標準契約書」、経済産業省2025年4月2日プレスリリースをもとに整理
1. 結論:決めるのは大家。入居者の一存では変えられない
賃貸物件でプロパンガスから都市ガスへ変更する場合、判断するのは入居者ではなく、建物の所有者である大家や管理会社です。
ガスの種類を変える工事は、給湯器やコンロだけでなく建物の配管そのものに手を入れるためです。
借主は建物に手を加えられない
国土交通省が公開している「賃貸住宅標準契約書」(平成30年3月版)の第8条第2項には、次のように書かれています。
「乙は、甲の書面による承諾を得ることなく、本物件の増築、改築、移転、改造若しくは模様替又は本物件の敷地内における工作物の設置を行ってはならない。」
乙が借主、甲が貸主です。
ガス設備の入れ替えは「改造」にあたるため、貸主の書面による承諾なしには進められない形になっています。
出典:国土交通省「賃貸住宅標準契約書」(PDF)
ガス会社側も大家の承諾を求めている
東京ガスの公式FAQにも、申し込みの前提として次の注記があります。
「※賃貸住宅の場合は家主(大家)さまのご承諾が、分譲マンションなどでは管理組合さまのご了解が必要となる場合がございます。」
入居者が単独で申し込んでも、そこで話が止まってしまう形です。
出典:東京ガス公式FAQ No.2376(該当ページ)
この状況は、行政の側でも課題として認識されています。
資源エネルギー庁は、賃貸集合住宅について「消費者は入居してからLPガスの料金を知ることが多い上、料金に不満があっても受け入れるしかない状況となってしまいます。これでは、消費者には選択の機会が事実上あたえられません。」と説明しています。
つまり、いま感じているモヤモヤは使い方の問題ではなく、仕組みの側に理由があるということです。
変更そのものは入居者の手を離れていますが、プロパンのまま料金を下げる道は残っています。
そのためにまず必要なのが、いまの単価が地域の相場と比べてどのあたりにあるのかを知ることです。
都市ガスに変えられなくても
いまの単価が高いかどうかは調べられます
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2. 都市ガスへの変更をはばむ3つの壁
大家に相談すること自体は自由にできます。
ただ、話を前に進めるには次の3つがすべてそろう必要があるようです。
1つ目が決定権、2つ目が導管、3つ目が設備です。
壁① 決定権:承諾を出せるのは大家だけ
セクション1のとおり、承諾を出せるのは貸主です。
分譲マンションを賃貸で借りている場合は、大家に加えて管理組合の了解も求められることがあります。
大家の側から見ると、工事費の負担や工事期間中の入居者対応が発生します。
いま入っている入居者1人の希望だけでは動きにくいのが実際のところで、断られたとしても、それは相談の仕方の問題ではないことが多いようです。
壁② 導管:前面道路に都市ガスが来ているか
都市ガスは地中に埋めた導管でガスを送る仕組みなので、建物の前の道路に本管が入っていないと引き込めません。
市区町村単位で見ると供給エリアに含まれていても、その中の一部の町だけが対象という地域もあります。
さらに東京ガスネットワークは、「※埋設されていても道路の他企業埋設物により引込工事が出来ない場合があります。」とも注記しています。
本管があること自体は、引き込めることと同じ意味ではないという点に注意が必要です。
調べ方はセクション3でまとめました。
壁③ 設備:給湯器・コンロ・配管の入れ替え
プロパンガスと都市ガスではガスの性質が違うため、いまの器具をそのままでは使えません。
東京ガスネットワークは器具について、「現在ご使用のガス機器はそのままご利用になれますが、プロパンガスと都市ガスではガスの性質が異なるため部品の取替(有料)が必要になります。ただし、取替部品が欠品の場合は、新たに都市ガス用ガス機器へのお取り替えが必要となります。」と案内しています。
配管についても、「プロパンガス配管は都市ガス配管より口径が細い場合が多く、配管を取り替える必要があります。ただし、都市ガスでもご利用いただける配管も一部ございますので、詳しくはご自宅にお伺いしてお調べいたします。」と説明されています。
出典:東京ガスネットワーク「都市ガスへの切替え」(該当ページ)
工事費はいくらかかる?
費用については、全国的な相場を示した公式データが見当たりませんでした。
「相場は◯◯円」と書かれた情報を見かけても、根拠までは確認できないことが多いようです。
東京ガスネットワークは、「ご自宅前にガス本管が埋設されており引き込みが可能な場合は、費用負担はございません。ガス本管工事が必要なお客さまは、工事延長や周辺のガスお申し込み状況により費用が異なりますのでお問い合わせください。」としています。
あわせて「調査費用は無料です。」とも案内されているため、可能性を確かめるところまでは費用がかからない形です。
金額が公開されている数少ない例として、大阪ガスネットワークが敷地内のガス管工事の平均費用を1件あたり204,823円(税込)と公表しています(2024年度実績を2026年4月の単価改定で補正・大阪ガスネットワーク調べ)。
※この金額は敷地内のガス管工事のみで、ガス機器の部品交換費用や買替費用は含まれていません。
※大阪ガス管内の実績であり、戸建てを想定した数字です。賃貸物件の相場ではありません。
出典:大阪ガスネットワーク(該当ページ)
入居者が払う金額という意味ではなく、建物側にどのくらいの規模の工事が発生するかの目安として見るとよさそうです。
大家がすぐには首を縦に振りにくい理由も、この規模感からうかがえます。
3. 自分の物件が都市ガスエリアかを調べる手順
大家に相談する前に、そもそも都市ガスが引ける地域なのかを自分で確認できます。
エリア外だとわかれば、相談そのものを省けます。
手順① 供給区域の一覧ページを開く
各社が供給エリアのページを公開しています。
関東であれば東京ガスネットワークの供給エリアのページ、関西であれば大阪ガスの公式FAQが入口になります。
大阪ガスは「大阪ガスは、2府5県83市35町のお客さまに都市ガスを供給しています。」と案内しています。
手順② 市区町村ではなく町名まで照合する
東京ガスネットワークは「一部地域のみが供給エリアとなっている市区町村がございます。詳しくは下記供給区域詳細(市区町村一覧)をご確認ください。」と注記しています。
住所を打ち込むと判定してくれる検索フォームは用意されていません。
供給区域の町名一覧(PDF)を開いて、自分の住所と照らし合わせる方式です。
市区町村名が載っていても、自分の町名が一覧にないケースがあるため、そこまで見ておくと確実です。
手順③ エリア内だった場合は調査を依頼する
町名まで一致していても、前面道路に本管が入っているかは現地を見ないとわかりません。
東京ガスネットワークは調査費用を無料としているため、ここまでは費用をかけずに確かめられます。
ただし、実際に申し込むところまで進めるのは大家です。
調査の依頼を含めて、まず管理会社に話を通しておくと話がこじれにくくなります。
いま自分の部屋がプロパンなのか都市ガスなのか自体があいまいな場合は、先に種類を確かめておくと調べ方が変わります。
そもそも自分の部屋はどっち? →
物件情報・ガスメーター・検針票の3ステップで見分ける方法をまとめました。
確認は数分で終わります。
4. 2025年4月の法改正で、入居者に効くようになったこと
都市ガスへの変更が難しい場合でも、ここ数年で入居者側の状況は少しずつ変わってきています。
2025年4月2日、経済産業省は液化石油ガス法の施行規則を改正する省令を施行しました。
改正で決まった3つのこと
経済産業省のプレスリリースには、次の3点が挙げられています。
- ① LPガス料金を請求するときは、基本料金、従量料金、設備料金の3つに分けて通知することを義務付け
- ② 電気エアコンやインターホン、Wi-Fi機器等、LPガス消費と関係のない設備費用をLPガス料金として請求することを禁止
- ③ 賃貸住宅向けLPガス料金においては、ガス器具等の消費設備費用についてもLPガス料金として請求することを禁止
出典:経済産業省 2025年4月2日プレスリリース(該当ページ)
いま住んでいる人に効くのは①だけ
同じプレスリリースには、次の注記が添えられています。
「(注)上記2及び3については、新規契約(本日以降締結されるLPガス販売契約)に係る料金についてのみ適用。上記1は新規契約・既存契約ともに適用。」
つまり、②と③が対象にしているのは2025年4月2日以降に結ばれた契約です。
すでに住んでいる部屋の契約がそれ以前のものであれば、効いてくるのは①の内訳通知ということになります。
あわせて、条文(液化石油ガス法施行規則 第十六条 十五の九)には「ただし、液化石油ガス販売事業者と当該一般消費者等との間で消費設備の貸与等に係る費用の負担方法について合意がある場合は、この限りでない。」という但し書きも置かれています。
ここで押さえておきたいのは、これらの改正でガス会社を選べるようになったわけではないという点です。
資源エネルギー庁の説明にあるとおり、賃貸集合住宅で選択の機会が事実上ないという状況そのものは続いています。
変わったのは、「何にいくら払っているのかが見えるようになった」という部分です。
2024年7月には別の改正も施行されている
その前段として、2024年7月2日施行分では、LPガス事業者が不動産・建設関係者等へ設備貸与や紹介料などの形で過大な利益供与を行う行為が禁止されました。
あわせて、賃貸集合住宅の入居希望者へLPガス料金等の情報を事前に提示することも求められるようになっています。
出典:経済産業省 2024年7月2日プレスリリース(該当ページ)
いま住んでいる部屋への効果は限られますが、次に部屋を探すときには、内見の段階でガス料金を確認しやすくなっていることが期待できます。
5. 入居者にできる現実的な対応策
都市ガスへの変更が難しい前提で、いまの部屋のままガス代を下げる方向に手を打っていきます。
負担の軽い順に並べました。
| できること | 手間 | 期待できること |
|---|---|---|
| 請求書で料金の内訳を確認する | 5分 | 設備料金が乗っているかがわかる |
| 1㎥あたりの単価を相場と比べる | 10分 | 交渉の根拠になる数字が手に入る |
| 給湯器の設定温度を下げる | リモコン操作のみ | お湯を沸かすガスの量が減る |
| 相場データを持って大家に相談する | 連絡1本 | ガス会社の見直しにつながることも |
| 次の引越し条件に都市ガスを加える | 物件探しのとき | 長期的には最も確実 |
まず請求書の内訳を見る
2025年4月2日以降、LPガス料金は基本料金・従量料金・設備料金の3つに分けて通知されることになっています。
この通知は既存の契約にも適用されるため、いまの請求書でも確認できるはずです。
設備料金の欄に想定していなかった金額が入っていた場合は、何の設備分なのかをガス会社に問い合わせてみてください。
LPガスの消費と関係のない機器の費用であれば、2025年4月2日以降の新規契約では請求が禁じられている項目にあたる可能性があります。
単価を相場と比べる
一人暮らしのプロパンガス料金は、月3,000〜5,000円前後が目安とされています。
都市ガスの平均が月2,000〜3,000円ほどなので、同じ使い方でも1.5〜2倍になることがあります。
1㎥あたりの単価で見ると、500〜600円なら適正〜やや安め、600〜700円で平均的、700〜900円だと見直しの余地がある水準です。
請求書に「単価」または「従量単価」の記載があれば、そこと照らし合わせてみてください。
※使用量・地域・ガス会社によって異なります。総務省家計調査等をもとに試算。
くわしい内訳の見方はプロパンガス料金が高い理由と対処法の記事にまとめています。
相場を持って大家に相談する
ガス会社そのものの見直しも、決めるのは大家です。
ただ、都市ガスへの変更と違って建物の配管を入れ替える工事は発生しないため、話が通りやすい場合があります。
「高いので安くしてほしい」だけでは動いてもらいにくいので、近隣の相場より1㎥あたり何円高いかという数字を添えるのがおすすめです。
同じ建物のほかの入居者も同じ状況であれば、まとめて伝えると受け止めてもらいやすくなることもあります。
次の物件では条件に入れておく
いまの部屋で打てる手を打ち切ったら、あとは次の引越しのタイミングです。
2024年7月の改正で、入居前にLPガス料金の情報が提示されるようになったため、内見の段階で比べやすくなっています。
都市ガス物件に絞りすぎると家賃や立地の選択肢が狭くなるので、「都市ガスなら加点」くらいの温度感で見ておくと探しやすいかもしれません。
まとめ
- 賃貸でプロパンから都市ガスへ変更するかを決めるのは大家や管理会社。入居者の一存では変えられません
- 承諾に加えて前面道路の導管と給湯器・配管の入れ替えという条件がそろう必要があります
- 供給エリアは町名まで一覧で照合する方式で、住所を入れて判定する検索フォームはありません
- 2025年4月2日施行の改正のうち、既存契約にも効くのは①の内訳通知。②③は同日以降の新規契約が対象です
- いまできるのは内訳の確認 → 単価と相場の比較 → 相場を持って相談という流れです
ガス代が高いのは、使い方が下手だからではありません。
入居した時点で決まっていた部分が大きいので、そこは気にしなくて大丈夫です。
変えられないところは早めに切り上げて、動かせるところに時間を使う。
まずは手元の請求書を1枚開いて、単価の欄を見るところからで十分です。
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